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「実際何でわかったんだ?」
「職業柄語学にはそれなりに鋭くてね」
猜疑心に満ち溢れたヒカルの言葉に、ギンペイは手に持ったメモ帳をぺしぺし叩く。
「ヤト村は近郊で古代遺跡や城塞跡が出てくるほど由緒ある土地でな、そのせいか出身者もやたらと古風な言い回しを好むんだわ。例えば一人称が“我”だったりな」
「しかし、だとしたら何故遠路はるばるこんなところまで?」
脇腹のあたりを押さえ顔をしかめながらのアンズの問い。
「シンオウの北端からここまでと言えばかなりの距離だぞ?鉄道を使っても半日かかる」
ふっと酷薄な笑みがギンペイの口許に浮かぶ。
「それについては、そちらのお巡りさんがよーく知ってるだろうよ。なんたってこのガキ同様当事者の一人なんだからな。まあ読心術持ちのエスパーリーダーさんももしかしたらわかってるかも知れないが」
部屋中の視線がギンペイの指差す先──トウマに集中する。トウマは立ったまま顔色一つ変えずにギンペイを見返す。
「………何の事やらさっぱり」
「とぼけるでない!」
突然ジュンペイが声を張り上げる。
「我らを閉じ込めたのは、主らであろうが!」
「…………閉じ込めた?」
鼻息荒いジュンペイを見ながら、理解しかねるといった様子でカツラが目を見開く。
「どういうことだ?」
「この坊主が言ったまんまの意味だよカツラ博士」
酷薄な笑みを張り付けたまま、トウマとジュンペイを交互に見るギンペイ。
「ヤト村並びにその近郊は現在各地方警察の連合部隊に封鎖されてる。そっから逃げ出したのがこのガキだ」
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