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再度全員が黙り込む中、トウマが胸ポケットからタバコの箱を取り出す。が、部屋が禁煙であることを思い出してすぐもとの場所にしまい込んだ。
「一つ提案があるんだがな、諸君」
部屋の中央に進み出て、他の面々を見回すギンペイ。
「こいつを少しの間護衛として雇ってはやれんかね?」
「待てよおっさん」
真っ先に反論したのはヒカルだった。
「事情はどうあれ、このガキはイエローをさらおうとジムまできた人間だぞ?しかもその結果こっちはジムまで破壊されてんだよ一部どこかのくの一のせいだけど」
どこかのくの一が視線を明後日の方向に向ける。
「境遇はどうあれ感情としては納得できん」
「それに警備上の問題でも承服はできませんね」
と、これはトウマ。
「先ほどヒカルくんも言ったように、ジュンペイ君は一度我々に敵対した人間です。警備過程で裏切られ、イエローを奪われる可能性も十二分にあるのですよ?」
「んなもん今から解き放ったって同じこったろうよ」
はじめてギンペイの声が荒げられる。
「あんたらがどんだけ重大な事件に関わってるか、細かい話は解んなくても何となく感じるよ。
だけどね、そらぁあんたの都合だよ。それともこの坊主のところで起きてる事件は今取りかかってる案件に比べりゃ大したことないから我慢しろってか?」
少なくとも俺の知り合いはそれをせんよ、気むずかしいが義理堅いからね。荒い息の中でそう付け足す。
「しかし事件が事件だからねえ。ジュンペイ君の境遇には同情するけど、こればっかりは私たちにはどうしようも」
「誰が事件ほったらかせっつったよ」
曲がった帽子を被り直しながら、ギンペイが唇の端を吊り上げた。
「ギブアンドテイクって言葉あるだろ?まずはこれをしっかり満たすところから始めようか」
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