第九章:東西奮戦記

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《中隊二番、応答せよ》 《こちら二番、目標地点に到達、これより二個小隊をもって捜査を開始する》 《こちら本部、了解した。十分な警戒をされたし、アウト》 《こちら中隊二番、了解した。アウト》 通信が終わると同時に、大分シワが目立ち始めた手が通信機の上に無線を置く。流れるような銀髪の年配の男は、目尻に深い影を落として視線をモニターに向けた。 誰かの目線に合わさった高さで動く映像。深緑の草原と、端にはアーマーを着た人間の姿がちらほらと映る。 左の人影の腕には、「police」と書かれた腕章。そして、足元を歩くグラエナと………右手には黒い筒状の何か。 「本隊に、仮に捜査隊が危機に陥ったら援軍は迷わず送るよう言え」 「了解。本隊に告ぐ。こちら指揮車両………」 観音開きの装甲車のドアが開き、若い男が一人飛び込んできた。 「シキ本部長」 シキという名に、年配の男が顔を上げた。 「ジョウト警視庁から連絡が。甲一種体制を許可なしに取り付けるとは何事かと」 「頭冷やせアホ、これでオッケ。伝えとけ」 「……首切られますよ?」 「五十路も半ばのベテランがんなもん怖がると思うか?最悪昔の弱味ちらつかせて強制的に黙らせるよ」 青年の言葉をシキは鼻で笑い飛ばし、再びモニターに視線を向ける。 「ベテランの強みって恐ろしいですね」 「お前もこうなるよう頑張れ」 「遠慮しますよ」 「そりゃ残念だ」 「小隊より連絡!」 その声に応じて、二人の掛け合いが終わる。
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