第九章:東西奮戦記

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「ギブアンドテイク?」 「そ。交渉の基本だろそんなもん」 一部例外を除いていかにも「要領を得ない」面々を小馬鹿にしたように鼻で笑うギンペイ。 「考えても見ろ。たかが十一、二歳の分際で身一つで凶暴化したポケモンの群れと三地方の警察部隊の包囲網を突破して、不馴れな土地で大道芸使って旅費まで稼ぐ。んなタフなガキが一度追い返されただけで諦めるかっつーの。ましてや面目をこうも綺麗に叩き潰された状態で」 ヤト村封鎖に関しては厳しい情報統制がしかれている以上、ジュンペイに送られるのは家宅侵入罪に器物破損、傷害、公務執行妨害に余罪諸々の「犯罪者」の汚名のみ。 無論ジュンペイ側の事情など斟酌されないし、そもそも表沙汰にできない。 「ヤト村の村民は押し並べてプライドが高い。それをズタボロにされて引き下がるならそいつぁモグリだよ」 おまけにこれは彼一人のプライドの問題に終始しないのが厄介なところだ。 「そういうわけで俺は、両者間の折衷案を模索したらどうかって話をしてるわけよ例えば」 「………このヤト村の小僧を我々の陣営に引き入れ、その対価として事件解決のあかつきにはイエローを協力に向かわせる。その折衷案とやらはこんな感じか?」 “例外”の片方であるナツメ(ちなみにもう片方はトウマ)の言葉に、ギンペイが満面の笑みで頷いた。 「お得意の読心術かね?」 その台詞に対し、ナツメは軽く肩を竦めてみせる。 「いや、簡単な推理だよ」
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