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「できるわけないでしょう馬鹿馬鹿しい」
例外その2──トウマが吐き捨てる。
名は体を表し、声は情を表す。この場合は敵意が激しく自己主張だ。
「ヤト村の住民にプライドがあるように、我々警察にも面子があります。包囲網を突破されて捕捉すらできず、民間人の手を借りて捕縛した相手と共同で警備をしろ?利益云々以前に感情的に無理な話です」
「それに俺たちヤマブキジム側の面子もな」
ヒカルもトウマの横にならびながら口を挟む。
「壁やら何やら叩き壊されて怪我人まで出して苦労して捕えた相手を何事もなく受け入れられるわけないだろ。第一」
私は別に構わないがなと小声で呟くナツメをギロリと睨みながら、ヒカルが続ける。
「本当に誇り高い人間がこそ泥みてえに他人様の家(厳密にいうと家ではないのだが)に忍び込むか?しかも目的は自分と大して歳がかわらん人間の拉致だぞ?次は裏切られたって何の不思議もねえぞ俺は」
「わかってねえな」
ギンペイの表情からまたもや笑みが引っ込む。嘲笑は諭すような口調に変わった。
「誇り高いからこそこのガ──失敬、ジュンペイはその“こそ泥”のような所業に手を染めた。さらに言うならな、誇り高いからこそこいつはもう二度とそんな真似はしない。俺が保証する」
「ずいぶん難解な話だね」
リカの眉根が寄り、過去に誰も解けていない数学の問題を突きつけられたような顔つきになる。
「私は語学は専門外なんだよね」
「んな難しい話じゃねえよ。単純明快な心理学だ」
鋭い視線がヒカルとトウマに向いた。
「ただよ。理由も大して説明されず、あまつさえ助けるどころか監禁してきた奴らに、あんたらなら何の後腐れもなく平然と頭下げられんのかい?」
ハッと息を呑む音。誰が漏らしたかは明白だった。
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