第九章:東西奮戦記

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一瞬、何かを相談するようにトウマとヒカルの視線が交錯する。 やがて、ヒカルがジュンペイの方に手を伸ばし───そのまま背後に回す。拘束具を外すカチャリという音が室内に響く。    、、、、、、 「協力させてやるよ、チビ助」 その言葉を聞いた瞬間、ジュンペイの表情が憎悪に彩られていたそれまでから一変した。 年相応と言っていい、満面の笑み。    、、、、、 「協力してやろう」 どちらからともなく差し出された手が、ガッチリと握られた。 「交渉成立かね?さて………………」 不敵な笑みから一転、額に冷や汗を浮かべながら、ギンペイはぎこちなく後ろを見る。 視線の先には、笑顔でモンスターボールを構えるヤマブキジムリーダー。 「ナツメさん、何でそんな物騒なものを?」 「いやなに、」 笑顔を保ったまま、ナツメが答える。一見友好的な笑みだが、ヒカルは知っている。 (ずいぶん怒り心頭だね………) 「場を納めてくれたのはありがたいが、“取材のため”と称して家宅侵入罪を企てるような男には多少仕置きが必要かと思ってな」 「……お得意のちょっとした推理なら外れ」 「残念だな、ちょっとした読心術の方だ」 フーディンの【サイコキネシス】に吹き飛ばされ、ギンペイとカズは悲鳴とともに窓を突き破って屋外に放り出された。 「……あの、大丈夫なんですか?」 「死にはしない」 ヒカルに問われ、鼻息荒くフーディンを元に戻しながらナツメが答える。 「心配するな、ちゃんと地面に直撃する前に減速するよう手心は加えた」 「いや、ジムの修理代の方の」 「……………ヒカル、お前断食経験したいとかそんな願望ないか?」 「出るとこ出ますよ?」
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