第十章:戦闘態勢

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「……俺この手の飲み物の味あんまり好きじゃないんすよね」 手渡された清涼飲料のペットボトルを睨みながら、ゴールドが誰にともなくぼやく。 「なんつーかこう……いかにも市販臭い味が気に入らないっつーか」 「市販臭いもクソも市販なんだから仕方ねーだろ」 シャーディがゴールドの愚痴をさらりと流し、ペットボトルを傾けて喉を潤す。 「それに文句を言うなら警察に、だ。支給したのはお巡りさんだからね。ちなみにいらんなら俺がもらう」 「いらねーとは言ってねーだろって………あーーーっ!」 シャーディの右手にあるペットボトルを凝視し、ゴールドの口から絶叫が飛び出した。 「何でてめえミックスオレなんて飲んでやがんだ!俺にも寄越せ!」 「誰がやるかバカ!これは署内の自販機で自腹で買ったんだっての!ほしけりゃてめえも自分の金で買え!」 「残念だな!俺は一文なしだ!」 「知るか!自慢気にいうな自慢気に!」 「五月蝿い!」 例によって取っ組み合いを開始した二人の脳天を、クリスの手刀が一撃した。 「そんなつまらないことで喧嘩なんかしないでよ暑苦しい!貴重な体力の無駄遣いよそれ!」 腰に手を当てて仁王立ちのクリス。が、勿論その程度で怯む二人ではない。瞬く間に立ち直り反論する。 「だからっててめえに叩かれるいわれはねえぞ!」 「そうだ!だいたい会ったときからそうだがマジメすぎんだよお前は!」 「マジメなのはいいことでしょ!あなたたちこそ不真面目すぎよ!」 「んだとこの仕切り屋!」 「学級委員女!」 「何よ不良コンビ!」 三つ巴の大乱戦を開始した三人を、床に正座して目を丸くしながら眺めるのはソラ。両手で包むように湯飲みを持っている。 「あれだけ激しい運動した後なのに皆さん元気ですねぇ。びっくりです」 「………そうねえ」 しきりに感心するソラの横では、ブルーが複雑な表情を浮かべていた。 (私としては激しい運動した後なのに入れたての熱いお茶を平然と飲めるあなたに驚きだけどね………)
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