第十章:戦闘態勢

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「怖いこと?」 「……………それが何か関係あるのか?」 「いいから答えてくれ」 突然の問いに首をかしげる二人だが、レッドの気迫に圧されて考える。 「まあ師匠の元で修行してた時は何度かあるな」 グリーンの言う「師匠」とはジョウトタンバジムリーダー・シジマのことだ。幼少期に祖父・オーキドの薦めで彼の元に留学し、ポケモンだけでなく柔道その他武術の手解きを受けた。 第十回リーグ戦のエキジビションマッチで激突した際には、その成長ぶりを見せつける形でグリーンが勝利をおさめている。 「やはり厳しい人だったからな。怒られやしないかと結構ビクビクしたものだ」 「私は………虫ポケモンみたらそうなるわね」 昔を思い出して懐かしそうに目を細めるグリーンの横でカスミも言う。 「もともとあーいううねうね動く感じとか胴の形とかが苦手なのよ。バタフリーとかアゲハントみたいな種類なら大丈夫なんだけど、キャタピーとかになると子供の頃のことを………………………うわ~やだやだやだやだ思い出したくない!」 記憶探索の過程でトラウマを掘り起こしたらしく、顔面蒼白で何かを振り払うように首を振る。ショートカットの赤い髪がその動きにあわせて左右に揺れた。 「しかし何故そんなことを聞く?俺たちの思出話を聴いて気晴らしでもしたかったのか?」 「そうじゃないよ」 グリーンの問いを否定しつつ、レッドの顔に明らかな動揺が現れる。何かを迷うように視線が左右にぶれたが、やがて意を決したように背筋を伸ばし、口を開いた。 「俺、つい最近感じたんだよ。“怖い”って。 マサラで、あのクロガネって奴と戦った時に」
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