第十章:戦闘態勢

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パチパチという音は、目の前の男が発したもの。 「速いですねぇ。流石に」 最後まで聞いてやる義理などない。無言で視線を送るや、ニューラが再び突出する。 「図鑑所有者。スピードもパワーも高いレベルでまとまっている」 言葉に、違和感。 そしてその感覚を裏付けるように、今度弾かれたのはニューラの方だった。 「おまけに必中技は確かに回避はほぼ不可能です。だが、回避ができないだけで防げないわけじゃない」 クロスされたニューラの爪。その表面には裂傷。 そして異様に鋭利な輝きを放つトロピウスの葉。 「…………【リーフブレード】か」 「御明察、と言いたいところですが」 闇夜の中でも、相手がニッと笑ったのを俺の目は捉える。 「それだけじゃ百点にはなりません」 風。ヤミカラスが突然地面に叩きつけられる。襲撃者はその余勢を駆ってさらにニューラの裏に回り、【突進】。 間一髪で跳躍したニューラの下を、マッスグマの白い体が駆け抜けた。 「スピードには自信があるんですよ。互角とまではいかなくても、十分あなたと戦えるかと」 「終わってから腕の一本や二本じゃ済んでなくても知らないからな」 意外な強敵の出現に内心焦りを感じつつも、それをおくびにも出さずに揺さぶりをかける。ブルー姉さんもよくやる手だ。 「俺は今しなければならないことがあ」 「そうですか。しかし」 俺の言葉を中途で遮り、相手が発した声。 本来聞く気のまったくなかったそれは、 「貴方の慕うブルーさん自身は、どうやら貴方に来てほしくないようですね」 容易く俺の耳陀を打った。
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