第十章:戦闘態勢

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クロガネ。 レッドの口から漏れたその名を聞き、カスミとグリーンの表情が変わる。 唐突に現れてマサラを焼き付くし、イエローを欲する黒衣の集団の頭領。実力のほどは定かではないが、ゴールド、シャーディ、イエローの三人の攻撃を一人で苦もなくあしらったというのだから決して低くはない。 それに、何よりもその配下たちのずば抜けた強さ。ジムリーダーを一人意識不明の重体に追いやり、図鑑所有者たちを相手にしてマトモなダメージすら受けずに圧倒する腕前の人間を四人も従えるような男が弱いとは思えない。 「あいつと対峙したとき、俺、色々偉そうなこと言ってさ。で、その時にさ……………見たんだよ」 「見た?何をだ?」 グリーンに促され、レッドの喉が一度上下した。 「目を」 サカキはかつてレッドを「元気を絵に描いたような少年」と評した。しかし、今グリーンとカスミの目の前に座る彼に、その面影は見られない。 「イエローたちと【電気の究極技】撃ったとき見たんだけどさ、真っ暗なんだ、あの目」 その時のことを思い出したのか、肩が小刻みに震える。 「黒一色ってのも気持ち悪いんだけどさ、それだけじゃないんだ。光とか温度とか感情とか、そういうの全部引っくるめて無くしたみたいな目付きで、見つめられるとこっちもだんだん………何か大事なもの無くしそうで」 震えが、僅かに大きくなる。
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