第2話 はじまりの終わり

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 三十半ばのグレーのスーツを着た男と、黒服にサングラスのいかにもなゴツイ体型が二人の合わせて三人が、やたらと足音を鳴らしながら足早にやってきた。彼らは展示物には一切目を振らずに、ただ正面だけをみていた。それはいかにも他の客とは雰囲気が違う、ひどく場違いな印象を与えた。と、黒服の二人が勇哉と摩耶の隣にやってきた。黒服は視線を落として槌を確認する。その後、視線を後方に移動させた、指示を仰ぐように。 「そう、それだ。今回の目標は。あと逃走用の人質にその女の子を」 後方からグレーの背広の男が指示を出す。勇哉と摩耶にも聞こえていたが、意味までは理解できなかった。次の瞬間、勇哉は黒服の片方から思いっきり殴り飛ばされた。不意打ちに全く対応できずに視界が回転し、床にたたきつけられる。 「勇哉っ!!」 摩耶が鋭く叫び、勇哉に駆け寄ろうとすると、もう一人の黒服に仰向けに押し倒された。首が節くれだった右手に締め上げられ、右肩は左手に抑えこまれる。抑えこむかなりの力で身動きがぜんぜん取れない。勇哉がふらつく頭を振って態勢を戻したとき見えたのは、黒服の片方が摩耶を人質に取り、もう片方は懐から拳銃をとりだして、展示品を収めたショーケースに銃尻を叩きつけたところだった。 「牙王(きばおう)さま、確保しました」 「ご苦労。では人質を盾に撤収する」 黒服の言葉に牙王と呼ばれた男が応える。摩耶を人質と利用する。それを勇哉が理解した瞬間、考えるより先に体が動いた。摩耶を助ける!
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