第2話 はじまりの終わり

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「面倒くさいな。奥の手で葬ってやるか」 ウェインカラクルがそういうなり、背中が不自然に盛り上がる。と、生地が破れる音がして背中から四本の腕が出てくる。 「カムイの力を味わえ。人形ごときには贅沢だがな」 最初からある二本の腕に奥から出てきた手が四本、合計六つの腕の各々に、炎、冷気、風、水、大地、雷の力をまとう。直後、巨大なティンダロスの猟犬が突進してくる。その強烈な一撃を大地の力を宿した腕でうけとめる。体が押されて半歩分ほど後ずさる。だが、それだけ。ダンプカーも弾き飛ばすであろう突進を完全に受けとめた。ついで側頭部のあたりを風の腕で殴る。かまいたちを追加した打撃は幅広い裂傷を与える。そこを炎の腕が傷口を焼く。反対側には水を刃にしてできた傷を冷気で凍らせる。猟犬があまりの痛みに悶えると、ウェインカラクルは飛翔しトドメとばかりに右の目に電気を宿した腕をズブリとつきさした。眼球が破れ体液がこぼれる。生暖かい体内で抜き手から拳を握りこむ。そして猟犬の体内で数万ボルトの電気が荒れ狂った。 「どうだい? そのままの意味だが奥の手の攻撃は」 電気の放出を終え、ウェインカラクルが尋ねる。だがティンダロスの猟犬は塵になりなにも応えず、うめき声すら出せずに消滅した。それを見て追加の腕を服の下に収納する。体に巻きつけると服の上ではほとんどわからない。少し体格が良くなった程度である。 「さて面倒くさいが報告に戻るか。ニイメ婆さんにお探しの闇使いがみつかったって知らしてやらないとな」 ウェインカラクルはそういうと、転移をした。あとにはありとあらゆるものが破壊された博物館があるのみだった。
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