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「かなり遠くまで飛んだはず…」
ウェインカラクルは膝をついた。
「ここまで来れば…」
息を整えて、再び立ち上がった。光邪では牙王が動きが活発になっていると聞く。おそら
くそれは今日の内に片付くだろう。しかし、まさかコタンからの刺客がこんなに早いとは…。
「ちっ…」
この男には珍しく、吐き捨てるような舌打ちだった。
* * * * *
勇哉と摩耶は博物館裏の森の中を走っていた。
「何なのよ!いったい!」
摩耶が速度を落としながら声をあらげた。
「あいつら!」
遠くに見える博物館はめちゃくちゃだ。程なく消防車やら、警察やらが来るに違いない。
「勇哉を狙ってるって言ったわね」
立ち止まりながら摩耶が言った。肩で息をしている。
「…私を人質にして、…それって、どういう…」
不意に摩耶の声が途切れた。
「…」
勇哉は、まさか、と思った。何年か前に見たきりの女の子らしい摩耶。こういう時男は女
を守らねばならない。
「…摩耶」
だが守る必要はなかった。
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