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声が途切れたのは、無節操に周囲にぶちまけていた怒気を己の内に収めている為らしかっ
た。摩耶の瞳が細められる。見慣れた表情だった。怒りのレベルが上がったと言える。扱い
の差が原因のようだ。
怒髪天を突く、とまでは行かないが、怒気で髪が揺らいだかもしれない。
「また襲ってくるかな?あいつら…」
勇哉が言った。摩耶は頷いた。
「勇哉…」
摩耶は静かに言った。先程までの大声ではなかった。殺気さえ感じられた。
「攻撃よ」
本当によくあることだが、勇哉はまた耳を疑った。
「攻撃って…?」
「こっちから攻めるのよ!」
「攻めるって…え?…マジで?」
摩耶のこういう目は過去、何回も、何回も、何回も見たことがある。今回も押し通すだろ
う。
「勇哉!」
「はい!」
「戻るわよ!」
「戻る?」
「博物館に行って手掛かりを探すのよ!」
「ええ!?」
摩耶はすでに博物館の方に行こうとしている。
「だって、これ…」
勇哉は秘宝ゴルディオン・ハンマーに目を落とした。
めちゃくちゃになった博物館でゴルディオン・ハンマーを片手に残骸を漁っていたら、1
00人が100人とも、こいつらが犯人だと思うに違いない。
「そんなもん!その辺に隠しときなさいよ!」
「…」
「戻るわよ!」
「戻るとは…」
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