1人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなことないって!」
僕のその言葉尻に摩耶を呼ぶ女の子の声が重なる。確か摩耶のクラスメイトのコだ。どうやら話している内に校門を過ぎていたみたいだ。
「あっ、優希。おはよー!んじゃ勇哉、放課後校門で待ち合わせね。先にご飯食べて3時半から映画で決定!いいよね?それじゃっ。」
そういってフットワークも軽く、クラスメイトと共に校舎の方に消えていった。聞こえてくる一緒にいたコ達の「相変わらず仲いいね」とか「朝からデートの約束?」とかって賑やかな声がかなり恥ずかしかったりするけど。もういい加減にして欲しいのに。
深呼吸をして2、3度首を振り、落ち着いて回りを見渡してみる。まだ8時を少し回った所で、徐々に増えてきてはいるけどまだ人の流れはまばらだ。いつも摩耶と一緒に学校に来てるからこんな時間に学校に来るのはホント久しぶり、去年の文化祭以来じゃないかな?
日差しも朝に比べるとだいぶキツくなって来て、僕のシャツにもうっすらと汗がにじんできている。何も変わらない夏の一コマ。そう、摩耶の言うとおり何も変わってない。僕の身に何が起こって、僕に何が出来るのかまだ分かんないけど、くよくよ悩んだって仕方ないし、気持ちはいつもポジティブじゃないとね。
「よしっ!!」
再度大きく深呼吸をしてから僕は校舎に向って歩き始めた。摩耶に「辛気臭い」って言われた表情じゃなく、決意に満ちた晴れ晴れとした表情で…
でも僕はこの時気づかなかった。家を出てから、いや、家にいる時からずっと僕を監視している二人の影を…
最初のコメントを投稿しよう!