第五話 混沌の転調

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「あたしは光邪の赤光です。あなたを倒しにきました。」 「・・・博物館の時のガキが、まさか闇聖だったとはな」 「な・・・」一瞬、勇哉の思考回路が混乱する。そういえば、摩耶はどこだ。 「摩耶!摩耶は?!」叫んで辺りを見回す。いた。少し離れたところにいるが、どうやら無事らしい。 「あ~、あの子は関係ないと思ったから、結界の外に出てもらってるよ」 「結界?小説とかによくあるアレのことか?」少しだけかじった知識を引っ張り出して、勇哉は問う。 「良く知ってるね。ここはちょっと光の屈折率とか次元とかいじって、中で起こったことは外の人やモノには干渉しないようにしてある空間なの」 「赤光様、あの女も我らの存在を知っています。生かしておくのは危険かと。」 「あ、そうなの?じゃそっちは適当にやっといて。」 「かしこまりました。」 「袋の中の服、汚したら後でしばくからね」 それを聞くが早いか、牙王は結界の外へ転移した。  摩耶を助けるために、今できることは何か。勇哉はつとめて冷静に状況を分析する。結界を出るためには、その作り手を倒すしか方法はない。しかし目の前の少女は、あの牙王を従える程の実力の持ち主だ。正面から戦っても、自分の実力で勝てる見込みなどゼロに等しいはず。となると奇襲をかけるしか・・・。そこまで考えて、「絶対摩耶を助け出す」と小声で唱える。自分への決意表明のつもりだった。逃げ出したくなる気持ちを、この一言で封じ込める。そうして、目の前の敵に正対する。 「戦う準備はできた?・・・苦しむのは短いほうがいいよね。」赤光は言う。その顔が少し悲しそうに見えた気がして、勇哉はたじろぐ。 「光の雨よ 下界に慈しみを与え賜え」そう言って、赤光はポケットから呪符を取り出す。「レインオブパール」 その言葉と同時に呪符が光りながら、空に舞い上がる。 「?!」 反射的にその場から離れる勇哉。次の瞬間、光の針が雨のように地面に降り注ぐ!集中豪雨地帯からは逃れたおかげで致命傷には至らないが、切り傷があちこちにでき、血がにじみ始める。 間髪入れず、新たな呪符が光る。「光の珠は全てを浄化する ボムオブトパーズ」 呪符はサッカーボール大の光球になり、勇哉目がけて飛んでいく。必死でかわそうとするが、追尾能力がある光球は逃げても逃げても彼を執拗に追う。そうしているうちに勇哉は結界の端に追いつめられ、 横腹に光球の直撃を食らう。
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