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「ごはっ」鈍い衝撃が内臓まで伝わり、勇哉はその場にうずくまる。
赤光の攻撃の速さ、威力が予想以上で、とても隙をつくどころではない。このままじゃ殺られる、と本能は絶望的な判断を下す。
立ち上がれない勇哉を見て、赤光は「ちょっと長くかかっちゃったね、ごめんね」と言いながら隙のない動作で歩み寄る。「光の刃よ彼の者を苦しみから解放せん ブレイドオブルビー」
見る間に彼女の手には深紅の剣が現れ、それを振り上げる。振り下ろすまで、あと5秒もかからないはずだ。しかし、勇哉はあきらめてはいなかった。最後の一瞬までにあきらめたら誰も助からないということを、考えるより先に直感していたからだ。そしてその姿勢は、運命をひっくり返すチャンスを生み出すことになる。
「・・・貴方も、あたしを殺せないのかな・・・?」勝利を確信したのか、剣を振り上げたまま、微かに赤光がつぶやいた。一瞬彼女の動きが止まる。今しかない。勇哉は残り少ない力で闇の塊を生み出し、彼女の顔向けて投げつける!
「きゃっ!なにこれっ!?」闇の塊は殺傷力こそないが、赤光の注意をそらすには十分だった。ひるんだ隙に勇哉は立ち上がり、彼女の腹めがけてタックルをかける。女の子にこういうことをするのは主義に合わないが、命がかかっているのだから仕方ない、と自分を納得させながら。
そうして彼女を数メートル吹っ飛ばし、地面に叩き付けた。不意打ちによるダメージは少なくなかったらしく、彼女は激しくせき込んでいる。一矢報いたカタチになった勇哉だが、自分は素手で、相手は武器を持っているという圧倒的不利は変わらない。この後どうする?と自問自答をしていたが、その間に赤光は体勢を立て直して呪符を取り出そうとする。そこへいきなり。
「闇聖ともあろう者が、タックルしか攻撃方法がないとはな」
空から声がして、よく使い込まれた木剣が勇哉の足下、歩道のタイルに突き刺さった。次いでチチカカコが降りてくる。
「あ・・・あなたは」
「それを使うがいい。自分の闇を剣にまとわせるのだ。その像を強くイメージしろ」
結界内なのにどうして来れたのか、と勇哉は問いたかったが、今するべきことはそうではない、と彼の瞳が語っていたので止めておいた。
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