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吐き捨てるように牙王が問う。イスカリオテと呼ばれた男は口の端を軽く上げてあざ笑うかのように答える
「牙王、また失敗したんだってな」
見下すように笑う。牙王は血が頭に上りそうになるが押しとどめる
「闇どもの力は強い。増援が欲しい」
うめくように呟くが、返ってきたのは冷笑だった
「無能に用はない。そして任務を放棄して楽になりたがるヤツもな」
瞬間、牙王はイスカリオテの言葉が理解できなかった。
「どういうことだ!」
「頭の回転が悪いな。これだからブルーカラーは嫌いだ。わかりやすくいってやる。13人会議はおまえらの抹殺を決めた。懲罰部隊『ジェボーダンの獣』を派遣するのさ」
イスカリオテのセリフを聞いて、牙王はモニターに拳を叩きつけた。イスカリオテの顔にひびが入り砕けた。同時に通信も途絶えた。切断されたのだ。
「…ここまで光邪に仕えたものを裏切るのか!」
牙王が壁に叫ぶ。腕が震える。
「せめて赤光様だけでも!」
男たちが歩いている。一糸乱れぬ足音と動作で。共産圏の行進のようなそれは、ある一点で極めて異質だった。全員が黒い鉄の仮面を被っている。それは、過去を捨てしがらみを断ち切り、人であることをやめた証。顔を焼き、皮膚がただれているうちに、仮面を被ることで、とれない鉄の仮面を被ったもの達。それが懲罰部隊『ジェボーダンの獣』。
彼らは裏切り者を粛清することを第一任務とし、怠惰な味方を死という形で律する、敵よりも味方に恐れられている特務部隊。
彼らは牙王と赤光が傷を癒している研究所に向かっている。と、歩く音が一斉に止まる。建物の入り口の前に一人の男が立っていたから。
鉄仮面の男たちを前に立ちふさがったのは牙王。静かな決意を抱いたその表情は悲愴に染まっている。
「やはり来たか、ジェボーダンの獣。私だけでなく赤光様までとは何故だ」
牙王の問いに先頭の男が答える
「無能者に死を」
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