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Ⅱ
「う~ん、勇哉、どうやったらこれ使えるようになるのかなぁ?」
摩耶は博物館から失敬してきたゴルディオン・ハンマーを振り回しながら、縁側に座ってこちらを見ている勇哉に尋ねる。
ここはニイメが所有している屋敷の庭である。市街の東側の住宅街の外れで位置して、並の住宅が7~8軒はすっぽり入る敷地をもっている。庭の広さも尋常でなく、槌を振り回しても迷惑になることもない。
「わかんないなぁ、ニイメお婆さんは認められれば使えるようになるとかいっていたけど」
勇哉と摩耶は、襲撃されることを恐れてとりあえず、ここに避難している。ニイメが張った結界に、ウェインカラクルとチチカカコの存在がある。ここより安全な場所などないだろう。
「でもなんで急にその槌に興味もったの?」
勇哉がいぶかしがるように尋ねる。いままでは摩耶は槌のデザインや歴史的価値に興味を持っても、その内側の秘められた力には無関心だった
「勇哉にだって、なんかよくわからない闇の力があるのに、私だけなにもできないなんてくやしいもん!」
なかばすねたような口調で摩耶は応えた。どうも守られるだけの立場が納得できないらしい。あきれた勇哉がなにか言おうとした時、ドンッという鈍い音が響いた
「……!?」
勇哉と摩耶が振りかえると、塀の上で大型の黒い犬らしきものが、こちらに入ろうとして、透明な何かに遮られては体当たりを繰り返している。
「ティンダロスの猟犬!!」
摩耶が叫んだ。勇哉は摩耶をかばうように摩耶の前に立った。
猟犬は虚空に飛びかかっては弾かれている。
ニイメが張った結界が行く手を塞いでいるということを、理解するのには二人は時間がかかった。その間にニイメ、ウェインカラクル、チチカカコが集まってきた。
「…様子が変だねぇ」
ニイメが体当たりを繰り返すティンダロスの猟犬を見てささやく。
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