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二十三時五十五分、寝間着に着替え、七時
に目覚ましをセットし明かりを消す。照明を
落としても真っ暗にはならず月の光が微かに
部屋に射し込んでいる。右手を月光に差し出
し掌に力を集中するようなイメージを描く。
すると掌のうえにソフトボール程度の大きさ
の漆黒の球が現れる。自分だけしか知らない
この能力、いつからできる様になったのかも
覚えていない。ただ光を遮るだけのものを生
む能力…暫くそれを眺めた後、窓に向かって
球を投げつける。窓にぶつけるとともに音も
なく散り散りになり光に溶け込んでいった
「おやすみ」
誰にというわけでなく呟きベッドへ潜りこみ
眠りにつく。そんな何でもない普通の一日を
送れるのが今日で最後なのを彼は知るはずも
ない・・・
「…しかし俺には信じられませんこの事態を
解決するには闇のカを有する者を捜さなけれ
ばならないとは…」
男の声は不満と不信と不安で構成されていた
「あなたの仰りたいことは理解できます。で
すがあなたは闇の一部分しかみていない。そ
れでは不安になられても仕方ありません」
女の声は子に諭す母の様に優しく厳しい
「ですがあなた様のカでなんとかならないの
ですか?」
「おそらく無理でしょうね。光邪には私のカ
も余り意味はなさないでしょう。それよりも
見つけ出すんです…”光邪”と対になり唯一
対抗できるカ…”闇聖”をもつ者を…」
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