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第2話 はじまりの終わり
摩耶はどこにでもいる優等生である。ただし優等生を演じていることはほとんどのものに知られてなかったが…
七時零分、休日といえども朝は遅くない。朝に弱い摩耶が目覚ましが鳴るよりはやく覚醒できるはずもなく、けたたましい音は所有者の起床を促す。摩耶はもぞもぞと布団にくるまりながら眠りを維持しようとするが、ベルの音は容赦ない騒音となって妨害をする。やがて目覚ましが目的が達したようで、眠りから解き放たれた。その結果は、細い手が布団の中から伸びて目覚ましを掴んで「うるさい」という不機嫌きわまりない声と同時に壁に投げつけるというものだった。目覚ましは勢い良く壁に衝突し、その衝撃で電池が外れ沈黙する。だが、せっかくの目覚めに対し、血圧の低さは再度の睡眠を要求する。それに抗うために上半身を起こすが、そこで行動は停止する。瞼を開こうとするが成功せず、糸目状態でぼーっとする。七時三十分、ようやく静止状態から動きが見られる。緩慢な動作でベッドから降りると、目をしぱしぱさせパジャマのすそをひきずりながら歩き出し、ふらつきながらも階段を降りて風呂場へ。寝ぼけてまくらを左手にぶら下げているのが微笑ましい。普段の優等生の仮面しか見ていない人が見たらとても同一人物にはみえないだろう。
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