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七時四十五分、熱いシャワーを浴びてようやく睡魔を体内から叩き出すとドライヤーで髪を乾かす。八時、シリアルを皿に開けて、国営のくせに受信料を要求する放送局のニュースを見ながらポリポリかじり、コップに注いだ牛乳でのどを潤す。八時三十分、ニュースが終わるとチャンネルを次々と変えるが好奇心に触れる番組がない。しかたないので録画しておいた深夜放送のB級映画「悪魔の毒々モンスター トーキョーへ行く」を見ながら考え事をする。無論今日のデートことである。勇哉より早く行って「遅い!」って一喝してイニシアチブをとるか、勇哉を適度に待たせて「遅いじゃないか」といってくるところを言い負かせて主導権を握るか、どっちを選択するか迷っていた。途中、冷房の効きすぎで、襟元が寒くなってきたので飼い猫のシルフィードを襟巻のようにまいた。シルフィードはヒマラヤンなので長毛種であったかく軽く、さらにもはや悟ったような態度で抵抗はしないので好都合である。十時四十五分、髪を背中で軽くまとめて眼鏡をかける。ちなみに約束の本屋はここから三十分。どうやらデートの計画は後者を選択したようである。服はグレーのズボンに白のパーカー。とくに気合を入れずカジュアルにまとめた。なに相手は勇哉だ。猫をかぶることも外見を偽装して点数を稼ぐ必要もない。
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