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「私が遅れた理由は途中から誰かがついてきたから、それを捲いていたからなんだけど、誰だったのかしら?」
「………」
「私は昨日、仕入れたばかりの情報から誇大妄想した好奇心旺盛な若者って推測するけど、あなたはどう思う?」
勇哉は無言で両手を挙げて降参のジェスチャアをかかげた。昨日のことは勇哉に非があるから全面降伏するしかない。それが事実であろうかなかろうが、勇哉には確かめるすべもないし。かくてまたしても連敗記録は更新された。
「さぁ、さっさといくわよ。せっかくの他称デートなんだから、時間がもったいないでしょ」
摩耶は勇哉の左手を掴むと、有無を言わさず連れ出した。
博物館は郊外の閑静な場所にある。唯一の公共機間のバスで勇哉と摩耶が着いたのは十三時を軽く回ったときであった。デートらしく、まずはドムドムドムバーガーという、なんだかゴツくて人相の悪い3人組が店員をやっていそうなハンバーガーショップで、ジャイアントバズ・セット(勇哉)とジェットストリーム・パック(摩耶)をぱくついて、とにかく腹だけは満腹になっていた。食欲を満たしてから知識欲というわけで、これは逆よりも正しいだろう。古来から衣食足りて礼節を知るという。まぁ、空腹で見るより満ち足りた気分で見たほうが集中できるし、印象も良くなるだろう。その知識欲を満足させるべき博物館の、いまの期間展示はアナトリア地方の歴史時代の史料展である。勇哉も摩耶も歴史が好きであるからここをチョイスした。ふたりとも雑誌のお勧めでセットされたコースを歩くのは好きではなかったし。休日というのにまったく混んでいないバスから降りると、摩耶が半ば勇哉をひっぱりながら窓口に向かう
「おばちゃん、高校生二枚」
「ほい、二枚で500円」
「だってさ、勇哉」
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