いざ出陣。

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「だから何故だ!」 ルシフェルはそう言うと、その赤い瞳で俺を睨み付けた。 「あのなぁ…」 俺は溜め息を付くと説明し始めた。 「馬車で敵の本拠地へ行ってみろ……解るだろ?わざわざ敵に先手を撃たせる事はない。」 「うむぅ…」 …うん。我ながらよく言った。 …魔王様も納得してくれたようだ。 「馬車は…諦めよう。だが…ならば、どうやって行くのだ?」 「徒歩で。」 ―ドゴッ。 痛い… 俺は後頭部を押さえながら呻いた。 「まぁいい。運動も健康を保つのに必要だからな。」 なら殴らなくても良いのでは…? 「―勇者。」 賢者は心配そうに俺を見ている。 「賢者…」 「どうしても、私達は置いてきぼりなの?」 「あぁ。」 何故こうなっているのか。 その原因は……ここにいる魔王様です。はい。 ――――――――― 「どういう事なの?!勇者!!」 賢者はそう怒鳴り腕を高くあげるが、剣士に腕を捕まれ、止められた。 「何で止めるのよ、剣士!!」 「…賢者。解ってやれ。」 剣士は宥めるように言うが賢者は勇者をキッと鋭く睨む。 「こいつは!魔王と単身で行くと言ったのよ?!わざわざ死にに行くようなものじゃない!何で剣士は…何で…!」 賢には賢者の頬から流れた雫が落ちた。 「仲間だから、だ。」 剣士がそう言うと賢者はハッと顔をあげた。 「勇者も解ってるんだ。死ぬかもしれないって事を…」 「そうだ。だからこそ、お前達の事を考えたんだ。…そうだろ、勇者?」 盗賊は剣士に続いて言うと勇者へと目を向ける。 「…敵わないな、盗賊には…。」 勇者はそう言うと肩を下ろす。 「…何で…勇者「お前等には。」 「お前等には…未来を作る義務がある。…俺が気付いていないとでも?」 賢者はその言葉を聞くと、ゆっくりと下腹部に手をかざした。 「……だろ?…それに、俺はどうせお前等を逃がすつもりだったしな。それが早まっただけだ。」 「勇者…」 賢者は後退り、やがて部屋から外へと駆け出した。 「勇者、すまなかっ 「剣士。」 「…追いかけて、一緒に居てやれ。お前の大事な奥さんだろ?」 「勇者……あぁ、そうだな。ありがとう、勇者!!」 剣士はそう言うと駆け出し、部屋から出ていった。 「勇者らしいな。」 「そっちこそ。」 勇者と盗賊は向き合い、硬く握手を交わした。 最後の…握手を。 ―――――――――
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