西の魔王

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「美味い!」 思わず感激の声を漏らしてしまった…俺。 「そうかそうか!遠慮せずもっと食いな!」 それに答えるようにがっはっはっと、威勢の良い太い声で笑う宿の主人。 宿を取った後、直ぐに食堂に直行したのが幸いし 何故かおやっさん(おやっさんと呼べと言われた。)に気に入られてしまった… ちらと見ると、おやっさんの口元には鋭い犬歯のような牙が… ……おやっさん。その牙は幻じゃないよな? …そしてよく見ると腕には緑色の鱗が… うん。おやっさんも魔族に間違いないみたいだ。 「レイン。その魔魚(マッドフィッシュ)…食べぬのか?」 ルシフェルはそう言いながら、俺の皿に残っていた…何かの目玉(魚らしい)を見つめていた。 ……流石に無理です。だって人間だもの← 見た目はただの目玉にしか見えないソレは よくよく見ると小さなヒレがあり、 神経糸が付いてるらしき場所には小さな …尾ひれが…… …うん。見た目グロいな。 本当に魚か?コレは。 「あ…えっと。食うか?「いいのか?!」 ルシフェルはそう言うが早いか すぐさま箸(という食事に使う道具)を器用に使い、自分の皿に移動させた。 「レイン。お主は良い奴なのだな…ありがとう。」 ニコッと…満面の笑顔。 でもそれをもたらしたのは目玉。 …何だ、この展開。 そうこうしている内にルシフェルは目玉を箸で掴み― 「……好きなの?ソレ。」 …聞いちゃったよ俺!! 「うむ。大好物だ♪」 …しかも嬉しそうに答えたよ魔王。 「むふ~♪美味(うま)~♪」 ……うん。もう気にするの止めよう。 俺は埒があかないと思い、その瞬間からいちいち気にするのを止めた。 ―父さん、母さん。 俺、真の意味での勇者を目指そうかなと思います。 だって、持ちそうにないんだ… 俺の一般常識(人間界での)が。
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