やってきた馬鹿

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それはそれは、とても暖かな日和だった… 「魔物だぁー!魔物が来たぞォお!!」 そう叫ぶのは村の門番。 その声に気付き、村人達も慌て家から飛び出す。 「レイン!あなたはここにいるのよ!いいわね?!」 母さんはそう言うと、まだ幼かった俺を井戸の中へ押し込み、 父さんは井戸の蓋を閉じた。 井戸の中は暗く、深い。けれど、村の″音″は容易に聴こえてきた。 「ついに…ついにこの村にも魔王の手がぁぁあ!!」 ―ズバンッ。 「ぎゃぁぁあ!」 ―ザシュッ。 「助けてくれぇあぁあ!!」 ―グチャッ。 四方八方から叫びと断末魔があがり 小さな村はあっというまに壊滅した…。 俺だけを残して。 それから数日後、 偶然通りかかった老夫婦に拾われ、 …数年後。勇者として、今…俺はついに魔王城に来た。 振り向けば…長いこの旅を…苦楽を共にしてきた大切で、頼もしい仲間達。 剣士…彼はとてもきさくな性格で 豪快に笑うのが特徴の豪腕剣士。 ……だからって寝てる俺にダンベルを乗せるな。重いから。 賢者…彼女は頭がとてもよく、頼れる姉御。 剣士さんとは恋人同士だ……羨ましい。 ただ、俺を着せ替え人形に使うのは…やめてほしいな。人として。 盗賊…いつもクールでドライなかっこいい奴。 様々な罠を見破り、俺達を沢山助けてくれた…有料で。 …毛虫が苦手らしく、今度服の中に入れてやろうと思う。ククク… …とまぁ、かなり個性的なメンバーだが、 事実。俺達は旅の終着点。 魔王城へと辿り着いた。 「皆!行こう!」 「「「おー!」」」 そうして…俺達は魔王城へと突撃していった… …引き返せば良かったと…凄く思った。
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