―ルシフェル―

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「…兄上、兄上。」 「ん?どうしたの?」 ―暗闇の中、響く声。 最初は女の子の声。 次は落ち着きのある青年の。 暫くすると、ぼやけながらも姿が見えてくる… 「何で皆は白い羽があるのに私にはないの?…何で私だけ髪が黒いの? 何で…… 私は皆と違うの?」 そこで女の子の姿がハッキリと見えた。 漆黒の長く細い髪… 赤い大きな瞳… そう、その子はまさに― ―――――――――――――― 「はッ…」 悪い物でも見たかのような そんな感じだった… 見開いたままの目。 高鳴っている心臓の鼓動。 微かに震える腕…肩。 そこで気が付く。自分はベッドに横たわっていた… 上を見ると、見覚えのない天井。 見覚えのない 少し汚れた感じの部屋。 「そう…か。ここは宿の… …嫌な夢だ。」 そう呟くと、余は自分を抱き締める。 …まだ、震えが止まらない… 「……何が魔王だ…何が……」 自虐的な笑みを静かに浮かべ、自身の手を見詰める。 未だ震えが止まらない 細い指のついた、色白の手。 ―バフッ。 布団の中に潜り、目をきつく瞑る。 「……嫌だ…ッ…嫌だ……余を… …1人にしないでくれ…。」 …傍に居てくれ… ふと、頭に過ったのは レイン。 ……む?何故、あ奴なのだ? 考えれば考える程、会ったばかりにも関わらずレインの事ばかり… 心臓は先とは違う高鳴りをし、 頬は…手を添えると熱を帯びていた… 「…まずい。風邪でもひいたか?……ふむ。かもしれぬな…」 余は自問自答し、寝る事にした。 余は気が付いていなかった。 …先程までの震えが止まり、恐怖が無くなっていた事に…
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