黄泉比良坂編

6/7
前へ
/9ページ
次へ
何から『逃げて』いるのかさえわからない。 辺りに響くのは、私の足音と荒い呼吸の音・・・・・ 他には何も聞こえず、何も見当たらない。 けれど、私は『追われて』いた―― 今まで私が過ごしてきた、平凡な、何の刺激もない人生からは、到底考えもつかない出来事。 それは、何の前触れもなしに唐突に起こった。 どう動くべきか、何が最善なのかはわからない。 ただ私は、震える膝を押さえて、闇雲にに走った。 暗闇を走る。 どうしてこうなってしまったのか・・・・・ どこからこうなってしまったのか・・・・・ そんなことは、当の私自身が知りたい。 ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ そう、確か私は課題を仕上げるために、研究の一環としてこの町を訪れたのだ。 ――その後の記憶は曖昧だった。 確かそんなことを考えてて、それからどうしたのか・・・・・・ 気がつけば、私はこうしていた。 ここ数日間の記憶が曖昧なまま、私は町中にいた。 町ではいつの間にか、昔から続く祭りが始まっていた。 随分と気分が悪い日々が続いたような気がしたけれど、気がつけば、妙に清々しい気分だった。 世の中には、とても良い匂いが溢れかえっている。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加