黄泉比良坂編

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それは、今まで嗅いだことのない魅惑的な香りで、いつまでもその香りの中に包まれていたいと思った。 そして・・・・・ そして、私は・・・・・ 私 「・・・・」 どこをどう来てここに辿り着いたのか・・・・・ 私はこの場所にいた。 暗闇の中、姿なんかぜんぜん見えない・・・・・ けれど、私はすっかり取り囲まれてしまっているのに気がついた。 どうしてそんなことがわかるのか・・・・・ 理由はさっぱりわからなかったけれど、とにかく私はそれがわかるようになっていた。 ぼんやり立ち尽くしていると、私を取り囲んでいたものが目の前に姿を現す。 どうやら向こうには、さらさら姿を隠す気なんてないようだ。 同時に私は、それが逃げられない『死』というものなんだなということを悟っていた。 空を見上げる。 空には真っ赤な月。 あたり一面の赤・・・・・ 赤い海・・・・・ 私が最期に思い浮かべたのは、どうにも頼りないあいつの仏頂面だった・・・・
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