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その頃、トラウスから北西に位置するライロン基地では視察が滞りなく行われていた。
駐機場を歩くアイリスの横では太くて髭を豪快に生やした基地司令官が何やらこの機体はどうとかこういう特徴がなどと言っているようだが、心を意図的に閉ざしている彼女にはその声は届かず、ただ静かに聞き入っている「形」になっていた。
正直、爆撃機のような大型の飛行機とかは旅客機とさほど大差はなく、すでに乗り慣れていた。
ふと、近くに駐機してあった攻撃機に目がいく。
爆撃機のようにエンジンが複数ではなく機首に1つ搭載されているその機体はどちらかといえば戦闘機に近い形状だった。
できるだけ無駄なもの―例えば銃座など―を削り取った戦闘機には何かしらの憧れが彼女にはあった。
結局そういううちに時間は過ぎ、明日はここから南東のベルーイ基地へ飛行するのみとなった。
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