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私が先生に頼まれてから半年が経っていた。
状況は変化なし。
相変わらず綾乃は不登校を続けている。
先生も半ば諦めていて
「藤森さん、もういいよ。ありがとう」などと言う始末だった。
しかし、手紙での綾乃は随分と明るくなり、バレンタインには沢山のチョコ付きの返事があり、みんなで分け合った。
電話で話したりする事もしばしばあったし、その声も明るかった。
綾乃自身もこの期間に何度も学校に来ようとしたらしい。
制服に着替えて、靴を履いて、いざ玄関から出ようとすると、どうしてもドアが開けられないと言うのだ。
体が震えて仕方がないらしい。ずっと休んでいた副作用だろうか。
「学校に行く気はあるけど行けない」と、私には理解できない、なんとも厄介な状態だった。
それでも私は毎朝綾乃を家まで迎えに行き、遅刻ギリギリまで玄関の前で待っていた。
鉛のように重たいドアが開かれるのを期待しながら。
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