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学校が近づくにつれ、チラホラと同級生を見かけだした。
綾乃を見て一瞬目を丸くする者。特に気にもしない者。反応は様々だ。
綾乃は所在無さげに俯いたままで、ひたすら学校へと自転車を走らせていた。
その顔が先ほどより赤くなっているのは自転車をこいだせいだけではないだろう。
学校に到着し昇降口に立った綾乃は、自分の下駄箱にじっと見入った。綾乃が最後に見た時と何も変わっていない。
「教室、行こう?」
私が促すと、綾乃は小さく頷き、私の二・三歩後ろからおずおずとついてきた。
その足取りは非常に重かった。いつもの廊下が今日はやたらと長く感じる。
あと少しで教室だ。そう思って後ろを振り向くと、綾乃との距離が開いていた。
私は綾乃のところまで戻って彼女の手をとった。
冷たい。じんわりと汗もかいている。
綾乃がどれだけ頑張ってこの場所に立っているかを思うと胸が熱くなって、思わず握る手に力が入った。
頑張れ、綾乃。
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