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綾乃からやっと返事が来たのは、それからさらに一ヶ月後だった。
いつものように郵便ポストに手紙を入れようとすると、中に可愛いピンクの封筒が入っていた。手に取ると、可愛らしい文字で『藤森さんへ』と書いてあった。
ついに来た綾乃からの反応。
私ははやる気持ちを抑えて手袋を外し、期待と嬉しさで震える手で封を破り手紙を読んだ。
それには一言だけ『いつもありがとう』と書かれていた。
それだけで私には十分だった。
それからは日を追う毎に彼女の返事は長くなっていった。
そしてとうとう私はあの質問をしてみた。
『何で学校に来なくなったの?』
彼女は言いづらそう、いや書きづらそうだった。
前置きを何度も何度もして、やっと書かれていた文に私は驚愕した。
『藤森さんが、先生と私のことをからかったから行きたくなくなったんだ』
絶句。
よもや自分が原因であったとは。
まさに灯台下暗し。
いや、この場合はそうは言わないのだろうか。
軽く混乱しているようだ。落ち着け、渚。
……そう言われてみれば、確かに覚えがある。
『綾乃とオカマホリが熱愛疑惑!』
みたいな見出しをつけて、おもしろおかしく手書き新聞のようなものを書いた記憶が走馬灯のように蘇ってきた。
無論、誰も本気にしていなかったし、その話題も一日だけだった。
私としては軽い気持ちで書いたジョーク記事だったのだが、繊細な綾乃にしてみれば、よほど嫌だったのだろう。
私は深く反省した。そして、なんとしても彼女を学校に復帰させよう、と心に誓った。
それから私はさらに熱心に彼女に手紙を書き続けた。
謝罪もしたし、もう誰もそんな記事の事を覚えていないと説得した。
以前手紙を止めてしまった子らにも再度協力してもらい、綾乃を励ました。
段々その輪も広がり、クラスの女子全員が少なくとも一度は綾乃に手紙を書いていた。
いよいよ終業式まであと二週間を切った。
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