第4話

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(あぁ……本当に妊婦さんなんだな……) 近くで見ると、はっきりと分かるほど彼女のお腹は大きかった。 すぐ横に来て頭を下げたので、慌てて窓を開けた。相手は少しかがんで私に笑った。 「メールの方ですか?」 「はぁ……。そうです……」 「良かった、本当に来てくれると思いませんでした……良かった。わざわざ、ありがとうございます……。嬉しいです。本当に良かった」 彼女は良かったを連発しながらにこにこと私に笑いかけた。 私は何だか微妙に警戒しながら、とりあえず隣に乗ってくださいと言った。 ここまできて知らんぷりする勇気は流石に無かった。 私は車を停めたまま、何を話せば良いやら分からなかったので、とりあえず思いついたことから言ってみた。 「いきなり、あんなメールきたから……」 「あぁ、ごめんなさい、絶対変な人だと思いますよね……。私あの時、色々あって、混乱してて。相談相手とかもいなくて、誰かと話したかったんです……」 「頼れる人もいないって……?帰るとこがないの?」 「はい……。あの、あるにはあるんですけど、帰りたくないというか、帰れないというか……」 言いづらそうだったから、それ以上は聞かないことにした。別にそんなに興味も無いし……。彼女はかなりハキハキと、明るい調子で話し続けた。 「あ、私美咲といいます。美しいに咲くって書いて……」 「そう……。綺麗な名前だね……。私はみちる……フツーにひらがなで」 「え?ゆりさんじゃないんですか?」 「ええ!?」 突然出てきた名前に驚いて、私は彼女を見た。相手も私以上に驚いたらしかった。 「あ……ごめん。妊婦さんなのに驚かせて」 「いえ、それは良いんですけど……。あの、メアドがそうだったので、ゆりさんっていうのかなって……」 「メアド?」 ああ、そっか。そういう意味か。 「Lilyのあとに数字の羅列でしたよね?だからこのアドレスの人は、ゆりって名前で、数字は誕生日なんじゃないかなって思ってたんです……。あれ、お誕生日ですよね?」 「うん、そう……。私の誕生日じゃないけどね」 「やっぱり。私、百合の花が好きなので、アドレス作る時いれたんです。数字は、適当に」 「じゃあ本当に、適当なアドレスに送ってその相手と会おうと思ってたの?」 「はい。馬鹿みたいですけど……。ちょっとやけっぱちになってて……。すみません」 「いや、私に謝ることないけど……。でも良かったね、私で……。変な奴とかだったら、危なかったよ」
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