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コーヒーはとっくに沸いていたけれど、飲む気はもうなかった(そもそも何でこんな時間にコーヒーなんて淹れたんだろ)。
どこにいても同じ気がしたので、ベッドで本でも読もうと思った。居間は静かだった。
「みちるさん」
「えっ……何?」
寝ていると思っていたから、突然話し掛けられて驚いた。
「今日は本当にありがとうございました。こんな怪しいの泊めてくれたりして。本当に公園とかで寝るしかないかなって思ってたんです……非常識なの、わかってるんですけど……」
「いいよ、そんな何回も謝らなくて。どうせ私もヒマだし、あんまり細かいこと気にするタイプじゃないし……。それにもっと非常識なヤツ知ってるからね、行くとこなくて困ってる妊婦さんくらい大丈夫だよ」
「そうですか……。私、結構図々しいんです。いろいろ、わがまま言うかもしれないですよ」
「じゃあお互い遠慮しないでおこう。私も面倒になったら出てけってはっきり言うから。その代わり赤ちゃんのこと一番に考えてよ。うちで何かあったら困るから」
私が話している間、彼女は私をじっと見ながら一生懸命聞いている様だった。
暗くて、顔は良く見えなかったけど。
「分かりました。ちゃんと寝ます。いろいろごめんなさい。お休みなさい」
「お休み」
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