第5話

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鎖骨位まで伸ばした髪はゆんわりとカーブして、優しい顔立ち。 化粧もほとんどしていなかったし(私もあんまりしないけど)、全体的におとなしそうな印象だった。 話していると、割とそうでもないのがわかるけど。 「子供が産まれたら」 「うん?」 「春っぽい名前にしようって思ってたんです。私も春生まれだし、春がいちばん好きだから」 「でも今からだったらどっちかというと夏生まれになっちゃうよね?」 「そうなんですよね……。私もそう思ったんですけど、でも別に良いかな―って。夏に産まれたけど、春の頃からずっと楽しみにして名前考えてたんだって」 「そう……良いかもね」 私にはあまり縁の無さそうな感情だったので曖昧に答えた。 「ところでさあ」 「はい」 「美咲さんって」 「美咲で良いですよ」 「じゃあ美咲って……」 「はい」 「何で笑うの……いくつ?」 「みちるさんはいくつなんですか?」 どうして私の話になるんだ。 「いくつに見える?」 「うーん……。18才くらい?」と、首を傾げながら笑って言った。 どうやら何が楽しいという訳じゃなく、私と話しているのがただ嬉しいらしい。 「まさか。もうとっくにハタチこえてるよ。学生じゃないけどね」 「あ、それでだいたい分かりました。私も多分、同い年くらいですよ」 やっぱりそうか。 私と同じくらいという事はあの娘とも同じくらいという事だ……。 それにしても私が18はないと思う。 何でだ。ピアスだらけで馬鹿みたいだからかな。 「みちるさん携帯、鳴ってますよ」 「あ、うん」 千波からだったから、台所に行った。電話がくるのは珍しい。携帯は持っていないから、家の電話だろう。 「ちな?おはよう」 「もうお昼です」 「うん、ごめん、いま朝ご飯食べたとこだから、遅い……。どうしたの?」 何となく千波の声は緊張している様だった。私は慎重に答えた。 「何かあった?」 「みちるさん今なにしてるの」 「今……?」 何て言おうか一瞬考えた。 美咲のことは何となく言わない方が良い気がして嘘をつく事にした。 それにもし暇だと言えば、家に来てと言われるかもしれないし。 千波に会うのは嫌じゃないけれど、それに付随する色んなものが今は面倒臭かった。 「これからバイト行くよ」 「なんのバイト?」 「いつもの……あの、本屋さん。シャボン玉買ったとこ」 これは本当。 「嘘」 「え?」 「嘘でしょ」 「嘘じゃないよ。何で?」 「嘘つき。みちるさんって嘘つきだね」
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