第3話

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家に帰ってから、まず眼鏡を探した。 十分くらい探しても見つからなかったので、だんだん自分は眼鏡なんか持ってなかったような気がしてきた。 仕方がないのでシャワーを浴びて、眠たくなるまで本を読む。 そういえば今日出かけたのに、本を買ってくるのを忘れていた。メモまでしたのに。 パソコンに貼っておいたメモを取りに行って、朝のあの変なメールを思い出した。 確かめてみると、返信がきていた。 時間は私がメールをしてからすぐ。 『おはようございます。こちらも春です。窓から桜が見えます。赤ちゃんも早く桜を見たいようです』 ……こちらも春ですって当たり前じゃないか……同じ日本なんだし。嫌、私がこっちは春ですとか書いたからか……。 寝ぼけてた。覚えてない 『赤ちゃんは女の子?男の子?名前はもう決まってますか?』 『どちらかは、まだわかりません。でも多分、男の子じゃないかなと思います。私が落ち込んでいたりすると、よく元気に動いてくれるから。男の子だから、母親を守らなきゃって思ってくれている気がします。』 またすぐに返事がきた。 五分もたってない。もしかしたら、ずっと待ってたんだろうか。 私が返信する前に、さらにもう一通きた。 『あの、ごめんなさい、もう少ししたら、メールができなくなりそうなんです。もし良かったら、お会いできませんか?下の駅で待ってます……』 メールの最後には、都内の駅の名前が書かれている。 この辺から、だんだん馬鹿らしくなってきた。いまいち相手が何が楽しくてやってるんだか分からない……。 興味がなくなって、さっさと寝ようとしたけれど、ふと思いついた。 もし千波とどこかに行くのなら、車はあったほうが良い。 千波は地下鉄やバスなんかには乗りたがらないだろうし、私も車のほうが動きやすい。 ただ問題は、私が車を持っていないこと……というより、車を借りる相手に電話をしたくないということだ。確実に、私は精神的にあまり良くない状態になる。そういう相手と喋らなくちゃいけない。うんざりしながら、私は携帯を取りに行く。
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