第3話

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用事のある時に限って繋がらない奴だけど、今日は何となく声を聞けるような気がした。 思ったとおり相手はすぐにでたけれど、突然子供の叫び声のようなものが聞こえてきて、私は思わず携帯を落としてしまった。 「キャー!キャーアアアア!」 「……………」 それが何なのだか分かるまで、私は床に落ちた携帯を見ながら、しばらく呆然としていた。 「アアー!ウワー!アハハハハハ!」 「あんたさ……」 「キャハハハハハ!……ねえー聞こえてる?みちるちゃん!」 「聞こえてるよ。うるさいよ」 「アー……おっきい声出したら疲れた」 黙れこの野郎。 「ねぇどうしてそういうことするの?恥ずかしくないの」 「恥ずかしくない。恥知らずだから」 私は溜め息をついて、落ち着こうとする。 今度会ったら、絶対ぶん殴ってやろうと決めた(いつも思うだけで、本当に殴ったことは一度も無いけど)。 「あのさ、お願いがあるんだけど」 「久しぶりなのにいきなりそれ?」 私はまた溜め息を吐いた。 まともな会話ができるとは最初から思ってなかったけど、さっきの悲鳴でびっくりしたのと、もう夜中だったのもあって、さすがに疲れてしまった。 「眠いから、早く切りたいんだ。疲れてるし」 「なんで疲れてるの?千波ちゃん?」 違うよ。 あんたと話すほうがちなといるよりよっぽど疲れるよ。 「あのこさ、ちょっと図々しいよね。みちるのことパシらせてる感じで。みちるを困らせていいのは私だけなのにね」 「図々しいって、ちなに会ったことないでしょ」 「ああ、うん、まあそうだけど」 喋りながら動いているらしく、カタカタ音がした。 「それでさ、車貸してくれない?」 「車ぁ?いいよー。もってって……。あっやっぱダメ」 「何で?」 「千波ちゃんに使うつもりでしょ?」 「違うよ」 とっさに答えてしまって、自分がひどく嫌になった。何故か私は、彼女には嘘をつきたくないのだった……。私はさんざん騙されているし、もっと酷いこともされてるのに。 「嘘でしょ。どうしてそういう嘘つくかなぁ……」 「嘘じゃないよ」 「じゃあ何に使うの。ほかに車なんて」 私はかなりへどもどしながら、悪戯メールのことを話し、それでも一応心配なので見に行ってみる、と説明した。 馬鹿みたいだけど他に理由が思いつかなかった。全く。 確実に笑われると思っていたけれど、何故か彼女は突然乗り気になった。
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