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「本当にツイてないなぁ。 何度この森を荒野にしようとしたことか……」
おもむろに両手へと魔力を集めては事象に変えず、放出しては また集める。 それを何度か繰り返す内に、またセロは重い足取りで歩き出す。
入口には何故か戻れない。 森を焼き払えば、エルフは敵になるやも知れない。 空を飛ぼうとすれば神聖な結界らしき何かで焼かれるし、既に何回か焼かれた。
打つ手無し。 もしかしたら打つ手があるかも知れないが、今のセロにそれを求めるのも酷だろう。
「ん、何だコレは。 ……あぁー、霧か!」
ぽんと手を叩き、自問自答に正解を導く。 が、だからと言って何かが変わる訳はない。
見るみる内に霧は視界を奪いながら濃度を深め、湿り気を帯びた大気が森に充満していく。
最早周りは水蒸気の煙に包まれ、一面緑の世界は一面真っ白な世界に変貌していた。
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