序章 人の城を奪う魔王

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 最初に目に映ったのは整然とした綺麗さと優美さを併せ持つ、広いエントランスホールだった。  壁に掛けられた絵画。 四角い粗雑なテーブルの上に置かれている花瓶に入った花束。  互いに強調することは無く、むしろ引き立て合うような役割を果たす装飾物は、ボロボロに見える城の外観とは全くもって異なる働きを見せている。  そして、紅の絨毯が指し示す三本の道。  左右に続く道と、正面の階段を昇った先に延びる道。  選択肢は三つ。 しかし、この広さだ。 所有者を捜すにしても、闇雲に捜すのは非行率。  セロもそう考えたのか、右手を頭に添えて唸り出す。 だが、それも一瞬だった。  考えるのを放棄し、真っ直ぐの道を選んで階段を昇る。  彼は単純明快に、こう考えたのだ。 “バカと悪者は高い所が好き”と。 何と無く間違えてる気もするし、この場合は どちらが悪者なのかと聞かれたらセロな訳だが。  本人は気にせず、どんどん歩を進めて行く。 目指すは城では定番の謁見の間らしき場所。  セロの足取りは嫌に軽かった。
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