PROLOGUE

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そして、私は一目見ただけで、姉を何と無く理解出来る様になってしまった。機嫌の良し悪し、眠気を催してきたことも、空腹になってきたことも、生理だって解る。そんな事解った所で何も意味が無いのに・・・嫌な特技を持って仕舞ったわ。 意識してるのかは知らないけれど、機嫌が良いときは、紅茶を飲んでから私も飲んでみたくなって仕舞うような、想像をかきたてる味の表現を語り始める。機嫌が悪いときは、美味しく無いとだけ言って立ち去って仕舞う。紅茶が勿体ないと思い、私は渋々その残った紅茶を飲んでいる。 何時も、その時飲んでいるのがベルガモットティーだった。 機嫌が悪いときにベルガモットティーを飲むのか、ベルガモットティーを飲むと機嫌が悪くなるのか迄は解らない。ただ、美味しくないと言って残す紅茶はベルガモットティーなの。ひょっとしたら、嫌いなだけなの醸しれない・・・。あの独特な柑橘系の風味が仄に漂うフルーティーさが私は好きだった。 その辺は比較的わかりやすい部分で、 眠くなると、どこと無くぼーっとした感じになり、空腹時はどこと無く仏頂面をしている。余り表情豊かではなく、殆ど無表情な姉の微細な表情の違いなので、此処迄くると屹度、解るのは私くらいだ。親でも、当の本人ですら解らないに違いない。 私もどう違うのかと聞かれても、具体的には答えられない。 そんなような雰囲気を醸し出していて、眠いの?と聞くと眠いと返答され、お腹すいた?と聞けば、何々が食べたいと要望が返ってくる。 姉はパスタが好きなので、その要望の八割方、カルボナーラかペペロンチーノだった。 そこで食事が姉の要望通りでないと、ふて腐れる。 多分、誰も気づいていないと思うが、私だけがそこに気づくので、どうにも気不味い空気の中での食事になって仕舞う。 そもそも、毎日、毎日パスタを食べる訳にもいかないのに、パスタばかり言うのが悪い。昨日食べたばかりなのに、今日も、酷いときなんて、ランチにパスタでディナーも食べたいなんて言い出すときがある。そのせいかは解らないけど、我が家の食事は比較的パスタが多い。よく飽きないものだと思う。 幸いにも、姉は料理が全く作れないし、作ろうともしない。いや、姉が料理をすれば恐らく、毎日、食事がパスタになって仕舞うので、助かっている。 「今日はパスタを作ってみたの」 「今日はって昨日もだよね」 「そうだったかしら?」
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