PROLOGUE

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その為に今まで我慢してきた。 偽りを演じる愚かな道化となり、仲の良い姉妹を演じてきた。 姉にどれだけ尽くしてきたことか・・・姉の我が儘を私は笑顔で引き受けてきた。 姉はとても喜んでくれた。私はその喜ぶ姉を見るのが好きで堪らなかった。 私は高笑いをあげて仕舞いそうだった。 それが、上手い具合に笑顔を演出していたのである。 あぁ、思い返せば私は昧者だった・・・けれど、その愚行が報われようとしている。 姉は私を信頼している。私を必要としている。その信頼を裏切ってやるのだ。 その時の姉の表情が浮かぶ。 姉が嗚咽し私に縋り付く。 それを振り払ってやるのだ。 愉快!実に愉快だ! けど、未だ時期焦燥ね。 姉の信頼を、姉の好意を私一人に集約させる。私だけを信じさせ、姉にとって必要不可欠な存在になる。 もう少し、もう少しなの! 姉が私の為に泣く! 姉が私に縋る! あぁ、なんて良い響きなのだろう。 それだけが私のレクイエムとなり、私を落ち着かせる。 そして、私は冷静になれる。 遇に・・・ごく遇に、この儘で良いんじゃないかとは思う時がある。 仲の良い姉妹・・・それはそれで幸せな日々を過ごしていけると思う。然し、私の心の憎悪がそれを許さない。傍から姉の楽しそうな表情を見ていると妙な苛つきを覚える。 私以外の人間と楽しそうにしていると、思い出したかのように、憎悪が顔を出し、心の中でぐるぐると渦を巻き、その螺旋が心を満たし、張り裂けそうな胸の痛みを私に与える。 その痛みが私に更なる憎しみを与えてくれる。 私は復讐しないと気が済まない。 その後は・・・知らない。その後の事なんてどうでもよくなっていた。
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