2156人が本棚に入れています
本棚に追加
山崎は飛び付くリンを優しく受け止め、目も当てられないくいの熱々ぶりを披露する。
…………なんて事は、決してなかった。
「ひっつくなっつーの」
「あぅあぅ~」
ベリッと、音が聞こえてきそうな程にアッサリとリンを引き剥がして、何事もなかったかのように消毒の用意を始める山崎。
そんな山崎を、リンは恨めしそうな目で睨む。
そう、この二人。
お互いの気持ちを確認したにも関わらず、今までと何ら変わっていないのだ。
「…………ススムちゃんのアホ」
「アホはお前だろうが。いいからさっさと傷見せろ。あ、すいません、ちょっとコイツの消毒するんで少しだけ外して貰えませんか?」
山崎の言葉に、沖田と斎藤は小さく頷いて腰を上げた。
「ちょうど今から、斎藤さんと僕の隊の巡察ですし、これで失礼しますね」
いつも通りの笑顔で部屋を出ながら沖田が言うと、斎藤も続いて部屋を出ていった。
カチャカチャと、準備をする音だけが部屋に響く。
「ススムちゃん、この前のおでこにチューは夢だったんですか?それとも幻覚?」
突然、真顔で詰め寄るリンに、山崎はガクッと方肩を落とす。
「…………そんなワケないだろ」
「じゃ、じゃあ何で…………」
言葉の途中で、シュンとする。
.
最初のコメントを投稿しよう!