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僕の彼女の名前は、綾瀬 美姫。美姫はとても本が好きで、よくいろいろな本を読んでいる。最近は日本の古文や、少しオカルトよりの本をよく読んでいる。いつだったか、彼女はこんなことを言っていた。
「ねぇ知ってる? 昔の物語では、蝶や蛍などの小さな虫をよく人の魂に例えてたのよ」
物語を読むことが好きな美姫は、当然書くことも好きだった。高校に入りたての頃に彼女の家に行った時、彼女は自分が書いた小説を数編見せてくれた。美姫の書いた物語は、何か心に問い掛けるものがあった。
「どうかな……。まだまだ練習が必要だと思うんだけど……」
「そんなことないよ。美姫の小説、すごくいい」
僕がこう言うと、美姫の愛らしい顔がさらに明るく輝いた。
「ありがとう! あたし、小説家になるね! そうしたら、あたしのデビュー作を睦月くんに見せてあげるね!」
その約束は、彼女とした最初で最後の誓いだった。
あれから月日が経ち、僕と美姫はある日のこと、お互いの友達と遊びに行った。みんなでいろいろな店で思い切り遊び、2人きりの帰り道、その悲劇は起こった。
僕と美姫が交差点で別れてすぐの事だった。
突然、美姫の進行方向から逆に車が猛スピードで突っ込んできたのだ。
けたたましいブレーキの音と、鈍い音。美姫を轢いた車は、美姫に気付かずそのまま去っていった。
「美姫! 美姫!」
僕はすぐにポケットから携帯を取り出し、警察と救急車を呼んだ。
しばらくして、美姫は病院に運ばれていった。警察からは、轢き逃げして行った車のナンバーと特徴を覚えているかぎりに答えた。
「美姫……。助かってくれ……」
しかし、虚しくも僕の思いは届かなかった。美姫は2日後の夜、17歳の短い命を閉じた。
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