黒猫

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 あの日から彼女はあまりここへ来なくなってしまった。きっと引っ越しの準備で忙しいのだろう。 ***  大きくノビをして空を見上げる。ただ青かった。  白くふかふかな雲がどこか遠くへ流れる様を見て、僕は彼女を思い浮かべる。  そういえば名前なんて知らなかった。彼女も僕に名前を付けたりなんてしなかった。 『名は体を顕す』  昔母親に聞いた気がする。彼女はきっと明るくて、素敵な名前なんだろうな…… ***  いつの間にか眠っていた。まあ猫なんだからそんなものだろう。 「無理よ、余裕がないの」 「お願い! お願いやから!」  騒がしいなあ。僕の日向に何をしに来たんだろう。目が覚めるとそこは日向ではなかった。 九条
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