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秋の寒空の下で
帰り道。
灰色と茶色しかパレットに盛らずに描いた絵画のような風景をとことこ歩きながら、さっきのセリフを反芻していた。
―― また、今度。
「……まぁ、普通に考えれば、これこそ本当に無ェーわな」
だけど。
もしかしたら、あるんじゃね?
そんな希望的観測を述べる、頭の隅に居るガキっぽい自分に苦笑しながら、俺は家路をゆったり歩いた。
シノハラさんに対する根拠のない希望と。
確信的な諦めを、抱きつつ。
そう。
それは。
紅葉のシーズンも終わり。
人がいなくなった閑散とした山を。
枯れ葉ばかりの木だけが賑やかに盛り上げていた。
そんな季節のことだったと。
―― 記憶、している。
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