遠征バス

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『お…おはようございます。』 同じクラブを愛する者同士、恐い人はいても悪い人はいるはずがない。 と、信じてる僕は勇気を出して挨拶しました。 恐いお兄さんは、黒いサングラスを少しずらし、上目使いで僕を見ました。 『おはよう。 見掛けない顔だな。 いつもどこで応援してる?』 野太い声を想像してたんだけど、予想より高くて優しい声で少し安心しました。 『はい、バック側のコーナーの後ろ当たりで応援してます。』 『へっ、ヌルい所だな。クルヴァには来ないのか?』 クルヴァとは、ゴール裏で最も激しく応援するエリアで、僕にとっては憧れの場所です。 『クルヴァっすか! 行きたいです。 でも、知り合いが居なくて行きづらく…』 『だからヌルいって言うんだよ! 知り合い居ないと応援できないのか?』 恐いお兄さんは、僕の言葉を遮り、サングラスの上から目を光らせた。 『そんな事ありません! クルヴァに行ったら死ぬ気で戦います!』 『死ぬ気で…。 本当だな! 俺、信二郎、よろしく。』 ゴツい右手を僕の前に差し出した。 僕は両手でその手を強く握り応えた。 『竜也と言います! よろしくお願いします!』
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