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信二郎さんは、サングラスの中の目を細め、初めて微笑んだ。
『じゃあ、この試合からクルヴァに来るか?』
『はい、喜んで!
お供させて下さい!』
信二郎さんとは、それから意気投合して、クラブのサポーターの歴史とかクルヴァの事を親切に教えてくれた。
やがてバスは敵地スタジアムに乗り込み、僕達はアウェイ側の整列場所へと向かった。
『仲間が場所取りしてあるから、前の方に来いや。』
信二郎さんに誘われるまま、後ろに付いて歩いた。
『ムエタイさん、お疲れっす!』
『ムエタイさん、おはようございます!』
追い越す人ほとんどと握手をしたり拳をぶつけ合い、信二郎さんは、列をかき分け進んで行った。
『信二郎さん、ムエタイって…?』
『俺のコードネームみたいなもんさ。』
信二郎さんは、少し照れたように言った。
やがて、信二郎さんの仲間の陣取る場所に着いた。
『ムエタイさん、お疲れっす!』
パンキーな強面(こわおもて)なお兄さん達は、拳を突き出し次々に挨拶を交わした。
『新入りの竜也だ!
よろしくな。
死ぬ気で応援するって根性のある奴だ!』
信二郎さんが僕の紹介をしてくれた!
『竜也です。よろしくお願いします!』
強面のお兄さん達は皆ニヤッと笑い、僕に拳を突き出した。
信二郎さんの真似をして一通り拳をぶつけて、仲間入りの挨拶は終了した。
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