序:ツンデレ

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  「べっ、別にお兄ちゃんの事なんか何とも思ってないんだからね!」 などと、杏子は一度たりとも言ったことはなかった。  杏子は京一の双子の妹だ。    友人が非常に多く、社交的、外交的で人気者。  それでいて、強がりで自慢癖があって劣等感など他人には絶対に見せない。  成績も優秀で、杏子と京一はいつも比べられた。  双子のくせに、何処もにていなかった。  ただ、どこか似ていたのだろうか?  ある日いかにもわざとらしく、杏子は京一にあのセリフを言った。  それは3ヶ月前の事だ。  京一は流行っていたインフルエンザにかかった。  当時死者も相次いだインフルエンザウイルスに感染した京一は、かなりきつい症状に悩まされた。  普段風邪を引いたからと言って、看病などしなかった杏子が、この間だけは献身的に看病に努めた。  だいぶ症状も収まってきた頃、 「ありがとう。」 と杏子に礼を言うと、杏子は顔を真っ赤にして照れた。 その時に杏子はあのセリフを吐いてしまった。 「べっ、別にお兄ちゃんが心配なんじゃないからね!か、かっ、風邪を、その、移されるのがイヤだったのよ、私は。本当にお兄ちゃんの事なんか何とも思ってないんだからね!!!」  その発言から互いを意識してることに、京一と杏子は気づいた。  気づいてしまった、、、  それから二人の環境、関係は一変したのだった。  
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