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俺の机に立っていたのは
11年前の彼女を模した
人形だった……。
彼女と出会ったのは、
更に2年前、丁度いじめが
盛んだった頃だ。
俺も被害者の一人で、
朝からいじめを苦に自殺した、
なんて言うニュースを見た事は
少なくない。
彼女が居なければ、
一人で旅立っていたかも
しれない。
(……皮肉な物だよな。
忘れたくても、
忘れられない自分が
まだ、そこに居るのが。
彼女への未練がそうさせる
のだろうか……。
それとも、彼女がまだ
離れようとしないのか?)
「……どっちかなぁ。
…………香奈美」
俺は、その人形に
同じ名を付けた。
11年前、病魔に侵され
旅立って行った、彼女の名を。
「作ったはいいが、
男の部屋に飾れる代物
じゃないな……」
座椅子を少し後ろに傾け、
天井を仰ぐ。
(飾りなさいよ)
「そう言われてもな……」
(せっかく、作ったのに
それはないでしょ?
責任取ってよ……)
「何の責任だ……って、
ええっ!?」
周りを見るが、俺一人。
(気のせいか……)
目線を人形に戻す。
「……まさか喋る訳ないしな」
「そのまさかよ」
人形……。いや、彼女が
動き始めた。
……俺の目の前で。
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